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労災統計から読み解く健康経営             第1回 メンタルヘルス編

「うちの会社は、そこまで深刻な状況ではない」——多くの経営者・人事担当者がそう感じているかもしれません。しかし厚生労働省の最新調査によれば、実に5人に4人以上の労働者が、強いストレスを抱えながら働いているという結果が出ています。

職場のストレスは「一部の人の悩み」ではない

厚生労働省が公表した令和5年労働安全衛生調査(実態調査)によれば、現在の仕事や職業生活に関して強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合は82.7%(令和4年調査:82.2%)とされています。5人に4人以上が、何らかの強いストレスを抱えながら働いているという計算になります。

ストレスの内容を見ると、「仕事の失敗、責任の発生等」が39.7%と最も高く、次いで「仕事の量」39.4%、「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」29.6%と続きます。業務量や責任、人間関係といった、どの職場にも存在しうる要因が上位を占めている点は見過ごせません。

精神障害の労災請求は過去最多を更新

数字が示すのは「感じているだけ」の問題ではありません。厚生労働省が公表した令和5年度過労死等の労災補償状況によれば、精神障害による労災請求件数は3,575件(前年度比+892件)に上り、請求件数・支給決定件数ともに過去最多を更新したとされています。

また同調査では、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は10.4%、退職した労働者がいた事業所の割合は6.4%との結果も出ています。10社に1社以上で、メンタル不調による長期休業が発生している計算です。

理学療法士として現場のリハビリテーションに携わってきた経験からも、心身の不調は決して個人の弱さの問題ではなく、業務量や職場環境、支援体制の設計によって大きく左右されるものだと感じています。

対策は「実施率65%」で足りるのか

ストレスチェックは常時50人以上の労働者を使用する事業場において実施が義務づけられている制度です。同調査では、メンタルヘルス対策としてストレスチェックを実施している事業所の割合は65.0%で、対策内容の中では最も高い割合となっています。裏を返せば、対象事業所であっても3割強では実施が徹底されていない可能性がある、あるいは実施しても結果の活用まで至っていないケースが少なくないと考えられます。

健康経営優良法人の認定基準においても、ストレスチェックの実施そのものに加え、結果を集団分析し職場環境の改善につなげているか、メンタルヘルス不調者への相談窓口や復職支援の体制が整っているかが評価対象となっています。「実施した」で終わらせず、「活用した」と言えるかどうかが問われる段階に来ているといえるでしょう。

まずは「今の状態」を知ることから

ストレスチェックの結果を集団分析し、部署ごとの傾向を把握することは、離職や休職といった深刻な事態を未然に防ぐための第一歩です。次回は、依然として年間100名近くが命を落としている過労死・長時間労働の実態について、厚労省データをもとに解説します。

著者:影石言光(ラグスタ株式会社)/理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種

メンタル・ストレス対策

執筆者 影石 言光

ラグスタ株式会社 本社統括取締役

理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種
パーソナルジム運営、企業の健康経営支援、高校・企業でのセミナー実績を持つ。臨床の視点から、職場の身体的リスクと組織課題を結びつけた支援を行っている。