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労災統計から読み解く健康経営               第2回 過労死・長時間労働編

前回は、労働者の82.7%が強いストレスを感じているという厚労省調査の結果をお伝えしました。今回はその延長線上にある「過労死等」の労災補償の実態について、最新データをもとに解説します。

年間137名が過労死等で命を落としている

厚生労働省が公表した令和5年度過労死等の労災補償状況によれば、脳・心臓疾患と精神障害を合わせた「過労死等」の請求件数は4,598件(前年度比+1,112件)、支給決定件数は1,099件(同+195件)に上り、うち死亡・自殺(未遂を含む)は137件とされています。労働災害全体の死亡者数が年間1,000件を下回る規模であることを踏まえると、決して小さな数字ではありません。

精神障害の労災認定は5年連続で過去最多

内訳を見ると、脳・心臓疾患の請求件数は1,023件(同+220件)、支給決定件数は216件、うち死亡は56件でした。一方、精神障害の請求件数は3,575件(同+892件)、支給決定件数は883件で、こちらは5年連続で過去最多を更新しています。うち自殺(未遂を含む)は79件とされています。

業種別では、脳・心臓疾患は「運輸業、郵便業」244件が最多、精神障害は「医療、福祉」887件が最多となっています。長時間労働のイメージが強い運輸業だけでなく、医療・福祉分野でも精神的負荷による労災が多く発生している実態が読み取れます。

認定原因のトップは「長時間労働」ではなく「パワーハラスメント」

意外に見過ごされがちですが、精神障害の労災認定における原因(出来事)のトップは、長時間労働そのものではなく「上司等からパワーハラスメントを受けた」というもので、支給決定件数157件を占めています。次いで「悲惨な事故や災害の体験、目撃をした」111件、「セクシュアルハラスメントを受けた」103件と続きます。

労働時間の管理だけを徹底していても、職場の人間関係やハラスメント対策が手薄であれば、精神障害のリスクは十分に防ぎきれないということです。

理学療法士として患者様の心身の回復に関わる中でも、身体的な負荷以上に、人間関係のストレスが回復を妨げる要因になっている場面を少なからず見てきました。

中小企業にも義務化されているパワハラ防止措置

職場のパワーハラスメント防止措置は、2022年4月からは中小企業を含むすべての事業主の義務となっています。事業主の方針の明確化・周知、相談体制の整備、事後の迅速な対応という3つの措置が求められており、これらは健康経営優良法人の認定においても、職場の活性化やメンタルヘルス不調防止の取り組みとして評価される項目です。

まとめ:「時間」と「関係性」の両輪で予防を

過労死等の防止には、労働時間管理という「量」の対策に加え、ハラスメント防止という「関係性」の対策が欠かせません。次回は、職業性疾病全体の約6割を占める災害性腰痛について、理学療法士の視点から解説します。

著者:影石言光(ラグスタ株式会社)/理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種

メンタル・ストレス対策

執筆者 影石 言光

ラグスタ株式会社 本社統括取締役

理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種
パーソナルジム運営、企業の健康経営支援、高校・企業でのセミナー実績を持つ。臨床の視点から、職場の身体的リスクと組織課題を結びつけた支援を行っている。