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健康経営

労災統計から読み解く健康経営             最終回 定期健康診断・生活習慣病編

これまで5回にわたり、メンタルヘルス、過労死等、腰痛、上肢障害、熱中症と、労災統計から見える健康経営の課題をお伝えしてきました。最終回となる今回は、労働災害そのものではなく、日常的に行われている定期健康診断のデータから、生活習慣病対策と健康経営の関係を考えます。

有所見率は10年間、上昇傾向が続いている

厚生労働省の統計によれば、定期健康診断における有所見率(全国平均)は、平成27年(2015年)の53.6%から令和6年(2024年)には59.4%へと、この10年間でゆるやかな上昇傾向が続いています。半数以上の受診者が、何らかの項目で「所見あり」の判定を受けているという計算になります。

業種別に見ると、令和6年の有所見率は道路旅客運送業が73.9%と最も高く、道路貨物運送業67.5%、建設業65.1%と続きます。一方、商業62.9%、製造業58.0%、保健衛生業55.8%となっており、業種による差は決して小さくありません。長時間の座位・不規則な勤務時間帯・食生活の乱れなど、業種特有の生活習慣が影響していると考えられます。

血中脂質検査の高さが示す生活習慣病リスク

項目別に見ると、血中脂質検査の有所見率は31.2%と、他の検査項目と比べて突出して高い水準にあります。血中脂質の異常は、動脈硬化や脳・心臓疾患のリスク要因として知られており、これは連載第2回で取り上げた過労死等(脳・心臓疾患)のリスクとも無関係ではありません。日々の運動不足や食生活の乱れが、将来的な重大疾病のリスクとして静かに蓄積している可能性があります。

健診は「実施」がゴールではない

労働安全衛生法に基づき、事業者には定期健康診断の実施が義務付けられていますが、本来求められているのはその先にある「事後措置」です。有所見者に対する医師の意見聴取、必要に応じた就業上の措置、保健指導の実施までが一連の制度として設計されています。健康経営優良法人の認定基準においても、健診の実施率だけでなく、有所見者への再検査勧奨やフォローアップ体制の有無が評価対象となっています。

理学療法士・作業管理士の視点からは、血中脂質や血圧といった数値の改善には、運動習慣の定着と作業姿勢の見直しが地道ながら有効な手段だと考えています。特別なプログラムを新設せずとも、通勤時の歩行や休憩時間の軽い運動を促す職場の雰囲気づくりから着手できることは少なくありません。

まとめ:6回の連載を通じて見えてきたこと

本連載では、メンタルヘルス、過労死等、腰痛、上肢障害、熱中症、そして生活習慣病と、労災統計・健診統計を通じて職場の健康リスクを見てきました。共通して言えるのは、いずれのリスクも「発生してから対処する」のではなく、日頃のデータに目を向け、早期に対策を講じることで防げる、あるいは軽減できるという点です。健康経営は特別な取り組みである以前に、こうした地道なデータの活用と現場改善の積み重ねだと、理学療法士・作業管理士としての実務経験からも感じています。

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著者:影石言光(ラグスタ株式会社)/理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種

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執筆者 影石 言光

ラグスタ株式会社 本社統括取締役

理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種
パーソナルジム運営、企業の健康経営支援、高校・企業でのセミナー実績を持つ。臨床の視点から、職場の身体的リスクと組織課題を結びつけた支援を行っている。