「健康経営優良法人を取得しようか検討しているが、実際のところ、取って何が変わるのか分からない」――そう感じている人事・総務担当者や経営者は少なくないはずだ。その問いに、6年連続で認定を取得し続けている経営者自身が、正面から答えてくれた。滋賀県草津市の警備会社、株式会社アダムスセキュリティ代表取締役・澤井敬輔氏である。
ABOUT THE COMPANY
株式会社アダムスセキュリティ(滋賀県草津市)は2011年創業の警備会社。交通誘導警備を主力に、商業施設・イベント・花火大会など幅広い警備サービスを地域に提供している。業界に先駆けてAIを活用した警備の実証実験にも取り組み、テクノロジーと「警備は接客業である」という人への気遣いを両立させた事業運営を行っている。
認定を「取るため」ではなく、「既にやっていた」健康経営
アダムスセキュリティは2021年から健康経営優良法人の認定を6年連続で取得している。だが澤井氏は、認定取得が目的だったことはないと明言する。
つまり、従業員の健康への投資と、それに伴う生産性向上が先にあり、制度はあとから見つけたラベルだったというのが実情だ。
「認定取得そのものに直接の効果はない」という率直な評価
健康経営優良法人の認定が、定着率や採用力にどう影響したか。澤井氏の回答は意外なほど率直だった。
一方で、明確な変化を感じている点もある。それは病気や体調不良から職場に戻る「復帰率」だ。
離職者を出して採用・育成コストを払い直すより、復帰できる環境を整える方が合理的だという考え方が、ここには貫かれている。
現場目線から生まれた具体策の数々
アダムスセキュリティの健康施策は、いずれも「体力仕事である警備業ならでは」の発想から生まれている。
整体・ジム費用の半額補助
月5,000円までを上限に、整体やジムの利用費を半額補助する制度がある。狙いは明快だ。
ただし利用率は決して高くないという。澤井氏は「スポーツジムの入会者で1年継続するのは6%程度というデータもある。使われない現実は受け入れている」と冷静に語った。施策の「使われなさ」を認めた上で続けているという事実は、宣伝ではなく本音の投資判断であることを物語っている。
インフルエンザ予防接種無料化(10年以上前から)
10年以上にわたって継続されている事実が、この施策の本質を語る。「やってみた」ではなく「やり続けている」施策として、業務継続性への実質的な貢献が積み重なっている。
禁煙手当という導入の工夫(過去に実施)
現在は実施していないが、過去には導入時に独自の工夫を凝らした施策もあった。
強制でも義務化でもなく、全員への配慮を先に示した上で行動変容を促す。現場の反発を最小化しながら施策を着地させる工夫の一例だ。
現場の熱中症対策
屋外勤務者への熱中症対策は、すでに冷却ベストや空調服を導入済みだ。さらに一歩進めた施策として、現場環境そのものの向上を検討している。
なお、夏場に新規採用した人材が現場でいきなり熱中症に近い状態になるケースが多いといい、「暑さに慣れる」期間の重要性についても言及があった。次の施策が既に視野に入っているという事実は、アダムスセキュリティの健康経営が「やりっぱなし」ではないことを示している。
企業型DC(確定拠出年金)の導入
中小企業では導入例が少ない企業型DCも、健康経営の延長線上にあるという独自の考え方を示した。
制度への提言――「評価制度としてはまだ弱い」
数々の施策を語った澤井氏だが、健康経営優良法人制度そのものへは、経営者としての率直な意見を持っている。
特に、健康経営優良法人の取得が企業活動に一定の制約をもたらす点についても言及した。
制度そのものへの評価は厳しい。しかし「だから取らなくていい」という話ではない。澤井氏が一貫して語るのは、「制度のために動くのではなく、現場の課題から動いた結果として認定がついてくる」という順番の話だ。
健康とメンタルは「体が資本」――経営者自身の経験から
澤井氏の健康経営への向き合い方には、自身の体調不良の経験が色濃く反映されている。
メンタルヘルス対策についても独自の視点を持つ。ストレスチェックなど形式的な制度には批判的な一方、フィジカルとメンタルの密接な関係性については強く信じている。
▶ 社内説明・稟議の場で使える、澤井氏の言葉
健康経営の導入を社内で提案する際、上司や経営層を説得する論理として、以下の発言は転用しやすい。
「体調を崩した時に、ある程度の補償や福利厚生がしっかりしていれば、復帰する率は間違いなく高くなります」
「体力仕事なので、腰を痛めたら立てなくなって仕事が止まる。それよりは整えてもらった方が、明らかに生産性がいい。1日休まれるよりマシ、という単純な打算です」
「お金があれば健康にも気を配れるし、時間も買える。資産形成も健康経営の一部だと思っています」
「労働は、お金を稼ぐことから始まります。健康経営も経済活動と切り離さず、直結させて考えるべきだと思っています」
これから健康経営に取り組む企業へ
最後に、これから健康経営に取り組もうとする中小企業の経営者・担当者への澤井氏のメッセージを聞いた。
そして、制度そのものへの向き合い方については、こう締めた。
まとめ
アダムスセキュリティの健康経営は、「制度ありき」ではなく「現場の課題ありき」で組み立てられている点が特徴的だ。整体・ジム補助、インフルエンザ予防接種、そして企業型DCに至るまで、すべてが「従業員が無理なく働き続けられる環境づくり」という一貫した目的に向かっている。健康経営優良法人という制度そのものへの率直な評価も含め、現場発の健康経営のリアルな姿が見えるインタビューとなった。
会社概要
地域密着の警備会社として、テクノロジーと「人への気遣い」を両立させた警備サービスを提供する株式会社アダムスセキュリティ。最新の機材やAIを活用した警備の実証実験にも取り組みながら、「警備は接客業である」という思いを社内の共通認識として大切にしている。
| 社名 | 株式会社アダムスセキュリティ |
| 代表者 | 代表取締役 澤井 敬輔 |
| 本社所在地 | 〒525-0034 滋賀県草津市草津三丁目13-47(木屋長ビル)2F |
| 設立 | 2011年11月 |
| 資本金 | 500万円 ※2026年8月1日に2,000万円へ増資予定 |
| 事業内容 | 交通誘導警備業務/雑踏警備業務/施設警備業務/イベント警備業務/店舗警備業務 |
| 対応エリア | 滋賀県全域、京都市など |
| 主な取り組み | 健康経営優良法人認定(2021年〜継続取得)/AI警備の実証実験/交通誘導警備を中心とした地域密着型サービス |
| 公式サイト | https://adams-security.jp/ |