対策は、続けなければ意味がない
前回、チェック→改善策の展開→再チェックという3ステップの仕組みをご紹介しました。しかし、この仕組みを一度回しただけで満足してしまうと、せっかくの取り組みが「昨年やった施策」で終わってしまいかねません。
腰痛対策を組織に根付かせるためには、取り組みの効果を継続的に確認できる状態にしておくこと、そして現場で異変に気づいた人が早めに動ける状態にしておくこと――この2つが欠かせないとされています。
スコアの経時変化を可視化する仕組み
腰痛チェックは一度実施して終わりではなく、数ヶ月おきに繰り返すことで初めて「変化」が見えてきます。個人のスコア推移はもちろんですが、企業の立場からより重要なのは、部署単位でスコアの傾向を追うことです。
たとえば、特定の部署だけスコアの低い社員が継続的に多い場合、それは個人の問題というより、その部署特有の作業環境や業務の進め方に起因している可能性があります。逆に、環境改善を行った部署でスコアが底上げされていれば、その施策が機能している根拠として示すことができます。
こうした部署単位でのモニタリングは、特別なシステムを新たに導入しなくても、既存の健康診断や安全衛生委員会の記録と組み合わせる形で運用できる範囲から始められるとされています。まずは「半年に一度、同じチェックを繰り返す」という運用ルールを決めるところから着手するとよいでしょう。
管理職向け:早期発見のための声かけと初期対応
チェックとモニタリングの仕組みがあっても、日々の変化に最初に気づくのは、現場を見ている管理職です。しかし、「体調どう?」という一般的な声かけだけでは、腰痛のサインは見逃されがちです。
現場で気づきやすいサインには、以下のようなものが挙げられます。
- 椅子から立ち上がる際に、手を膝について体を支える動作が増えた
- 長時間の会議の後、体を伸ばしたり腰をさすったりする様子が見られる
- 以前よりも頻繁に席を立つ、あるいは逆に極端に動かなくなった
こうした様子が見られた場合、いきなり「病院に行った方がいい」と伝えるのではなく、「最近、腰の調子はどう?チェックの結果と合わせて相談してみない?」といった形で、チェックの仕組みに自然につなげる声かけが有効とされています。管理職が”診断”をする必要はなく、あくまで”気づいて、つなぐ”役割に徹することが、無理のない運用のポイントです。
見えてきた、もう一つの視点
ここまで腰痛を中心にお話ししてきましたが、腰痛チェックに含まれる片脚立位バランステストは、実は腰痛だけでなく、転倒リスクの早期発見にもつながる可能性がある項目です。特に高年齢の労働者において、転倒は重篤な労災につながりやすい災害のひとつとされています。腰痛対策の枠組みで得られたデータが、思わぬ形で別のリスクの発見につながることもあるのです。
まとめ
腰痛対策を組織に根付かせるには、スコアの経時変化を部署単位で可視化する仕組みと、現場で最初に気づく管理職の初期対応が両輪となります。3回にわたってご紹介してきた「知る→改善する→続ける」という流れを、ぜひ貴社の健康経営の取り組みにお役立てください。
腰痛対策の導入や運用、管理職向け研修に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください。
影石言光(ラグスタ株式会社)/理学療法士・作業管理士・メンタルヘルスマネジメント検定Ⅱ種