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全3回シリーズ:健診結果の改善と健康経営
第1回:なぜ健診結果の改善が経営課題なのか(今回)
第2回:医療費・保険料が下がる仕組み
第3回:コラボヘルスの実践

毎年当たり前のように実施している従業員の健康診断。多くの企業では「労働安全衛生法で決まっているから」「受診率さえ満たしていれば問題ない」という位置づけで運用されているのではないでしょうか。

しかし、健診結果の改善は、従業員個人の健康の話にとどまりません。実は、目に見えない形で企業の生産性を蝕んでいる「プレゼンティーイズム」という現象と密接に関わっています。本記事では、健診を単なる法定義務ではなく経営課題として捉え直すための視点を整理します。

1. 「出社しているのに生産性が落ちている」という見えないコスト

健康経営やコラボヘルスの文脈でよく使われる2つの概念があります。

  • アブセンティーイズム:傷病による欠勤そのもの。数字として見えやすく、把握もしやすいコストです。
  • プレゼンティーイズム:出社はしているが、頭痛・腰痛・アレルギー・睡眠不足・メンタル不調などの健康問題によって、本来のパフォーマンスを発揮できていない状態。

重要なのは、企業の健康関連コスト全体の中で、アブセンティーイズムよりもプレゼンティーイズムの占める割合の方が大きいと考えられている点です。欠勤していない=コストが発生していない、ではありません。「出社していること」自体が、コストの見えにくさを生んでいるのです。

アブセンティーイズム
傷病による欠勤
→ 数字として把握しやすい
→ 対策の効果も見えやすい
プレゼンティーイズム
出社しているが本調子でない
→ 数字として見えにくい
→ 気づかれないまま蓄積しやすい

2. プレゼンティーイズムと健診結果はどうつながるのか

プレゼンティーイズムの原因は、慢性的な肩こり・腰痛、花粉症などのアレルギー、偏頭痛、睡眠不足、そして高血圧や糖尿病などの生活習慣病まで多岐にわたります。これらの多くは、健康診断の項目(血圧・血糖・脂質・BMIなど)と直接重なる領域です。

つまり、健診で数値の異常が見つかっても放置されている状態は、「将来の重症化リスク」であると同時に、「今まさに進行しているパフォーマンス低下」でもあります。健診結果の改善に取り組むことは、遠い将来の医療費対策であると同時に、今年・来年の生産性を底上げする取り組みでもあるのです。

3. 「法定義務」で終わらせている企業に起きていること

健診を受診率の管理だけで終わらせている企業では、次のような状態が見過ごされがちです。

  • 健診で「要精密検査」「要治療」と判定された従業員が、実際に医療機関を受診しているかまでは追えていない
  • 数値の異常が、業務のどの場面でのパフォーマンス低下につながっているか、部署単位・職種単位で見えていない
  • 健診結果の改善・悪化を、単年度の「結果」としてしか見ておらず、経年の傾向として捉えていない

これらはいずれも、「健診=義務」という捉え方のままでは気づきにくい視点です。健診データを経営指標の一つとして扱うことで、初めて見えてくる課題があります。

まとめ:健診は「今のコスト」にも効いている

健診結果の改善というと、多くの企業は「将来の医療費対策」という中長期的な話としてイメージしがちです。しかし実際には、プレゼンティーイズムの改善という形で、短期的な生産性にも直結しています。

では、この「見えにくいコスト」を、企業はどう可視化し、どう経営判断に落とし込んでいけばよいのでしょうか。次回(第2回)では、健診結果の改善がもう一つの経路――医療費・保険料――にどうつながっていくのか、その制度的な仕組みを詳しく解説します。

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